道場に来るなり奴隷と化しているM・Tに初心を尋ねる私

届かないと分かっているものの、私は天井に聳える一本の支柱に向かって手を伸ばしてみるとボキボキと背骨の鳴る音が聞こえた。
「駄目だ。全然、手順が分からない。パニックになりそうだ。早く手、貸してくれよ」
 一見すると単純に見えなくもないその作業に悪戦苦闘しているM・Tを補助するのが私の道場での初仕事だった。M・Tはどうやら、網戸の網をゴム紐で枠の溝に固定するという最も肝心なところで躓いているらしい。
「角で押さえててくれ。そう、いい感じ」
 幼馴染み二人の息はぴったりだった。
 結局、私がM・Tを手伝ったことでその作業は五分と経たずに終わった。
「何だ、楽勝じゃん。って、さすがに初日からこき使われ過ぎでしょ。あなたいったい此処へ何しにきたの?」
 私の眼にはM・Tが道場で雑用をやらされているようにしか映らなかった。
「もう一本手が欲しくなるくらい、一人でやると意外と手こずるんだ、これが。それより樹……」
 続けざまにM・Tは声を潜めるように言った。
「ここはかなり厳しいぞ。スパルタなんてもんじゃない。無茶させられそうになったら断る勇気も必要かもしれない」キレイモ 0円